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広末涼子が家宅捜索・勾留!今後の展開は?

広末涼子が家宅捜索・勾留


先日、俳優の広末涼子が傷害の容疑で逮捕され田、というニュースが飛びこんできました。
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その後の報道によると、広末涼子については、

  • 逮捕前後の言動が不安定だった。
  • 傷害事件の前に交通事故をおこしており、危険運転致傷罪の疑いがある。
  • 4月10日に自宅等に「家宅捜索」が行われた。
  • 4月10日付けで検察官が勾留請求をし、裁判官が4月19日までの勾留を許可した。
  • 弁論人が勾留許可決定に対する不服申し立てをし、4月11日までに裁判所が不服申し立てを認めない旨決定した。

とのことです。
順に解説し、今後の展開を考えていきます。

家宅捜索は何のために?

警察は4月10日に広末涼子の自宅等に対して捜索差押(いわゆる家宅捜索)をしています。
傷害事件でも喧嘩やDVの事案では、通常は捜索差押をやりません。ですが、報道によると、広末涼子は逮捕前後の言動が不安定だつたようです。捜査機関は、薬物や精神疾患の影響を疑っているのでしょう。その場合、傷害事件に至るまでに薬物等の影響があったのか、犯行の動機や経緯を明らかにしなければ、捜査を尽くしたとはいえません。
また、危険運転致死傷の容疑があると報道されていますが、これも薬物等の影響で事故を起こした疑いがもたれているのでしょう。
このような理由から、傷害事件の動機や経緯を明らかにするために、自宅等に対する捜索差押をすることはおかしなことではありません。
捜索差押により、覚醒剤等の違法な薬物があれば、当然押収していました。また、精神科から処方された薬や精神科の診察券等があれば、そこから通院歴を明らかにできますから、押収します。

勾留が許可されたのはなぜ?

報道によれば、4月10日浜松の検察官が勾留請求をし、浜松の裁判官が4月19日までの勾留を許可したとのことです。
広末涼子は4月8日に逮捕されています。逮捕は、最大でも72時間しか捕まえることができません。検察官は、この72時間に捜査を終えることができない、被疑者を釈放して捜査すると証拠隠しや逃げるおそれがあると判断したときは、裁判官に勾留請求をすることができます。裁判官がこれを認めると、10日間の勾留が許可されます。
この事件では、4月10日に勾留請求がなされています。4月10日が起算日で初日は算入しませんから、4月19日が10日目になります。
この事件で勾留が許可されたことが妥当かは、何ともいえません。被疑者が著名人ですから、逃げるおそれはほぼないと思われます。証拠隠しのおそれがあるかとなると、傷害事件の被害者を始めとする病院関係者に対して何らかの働きかけをすることは、その可能性がまったくないとまではいえないかもしれませんが、現実的な可能性はないのはないでしょうか。例えば、薬物等とは関係なく、単に病院関係者とのトラブルで感情的になり、手を出してしまった、という事案であれば、勾留はされなかったのではないでしょうか。
ですが、この事件は動機や経緯を明らかにしなければ、捜査を尽くしたとはいえません。この動機や経緯に関して証拠を隠されるおそれがあるということであれば、勾留が許可されたのはおかしなことではありません。

不服申立てとは何か?速く判断された意味は?

報道によれば、弁論人は勾留許可決定に対して不服申し立てをしたものの、4月11日までに申立棄却、つまり不服申し立てを認めないと判断されたようです。
勾留許可の決定は、浜松の裁判所の裁判所がします(なお、「裁判所」が勾留を許可したと報道されていますが、これは不正確です。勾留を許可するのは、「裁判所」ではなく「裁判官」です。)。
弁護人に裁判官の勾留許決定に対して不服申立をすることできます。この不服申立が準抗告です。準抗告があると、浜松の地方裁判所で審理がなされます。この審理には、勾留許可決定をした裁判官は加われません。
裁判所が勾留許可決定が妥当ではないと判断すると、勾留許可決定を取消し、検察官の勾留請求を却下する旨の決定をします。この場合、被疑者は釈放されます、
裁判所が勾留許可決定は妥当であると判断すると、準抗告申立を棄却します。この場合、被疑者は勾留されたままです。
ところで、この事件では、4月10日に勾留許可決定がなされ、翌日までには当時中に棄却決定がなされています。そのため、わずか1日で不服申立が棄却されたということはろくに審理がされていないのではないか、勾留を取り消す余地がない事件なのではないか等と勘ぐっている方もいるようです。ですが、準抗告申立が当日中に棄却されるのは通所の運用です。
準抗告は、通常は申立があったとその日のうちに判断されます。土日祝日の場合はそうとは限らないのですが、平日の裁判所執務時間中に申立があったときはほとんど場合で当日中に判断されています。勾留を取り消すべきかが微妙なとき等は審理が夜遅くまでかかることもめずらしくありません。ですから、当日中に棄却決定がなされたからといって、取り消す余地がない事件であったということにはなりません。

今後の展開は?

広末涼子に対する勾留の期限は4月19日です。浜松の検察官は、4月19日までに捜査が終わらず、被疑者の勾留を続ける必要があるときには、裁判官に勾留延長請求をすることができます。これを裁判官が許可すると、勾留の期限が4月29日まで延長されます。事件に至る動機や経緯に関して捜査が尽くされていないということであれば、勾留延長が許可される可能性は高いでしょう。
弁護人としては、被害者との示談を急いでいるでしょう。弁護人と被害者との間で示談が成立し、傷害罪で刑事処罰を与える必要がないということになれば、勾留期限の4月19日又はその前にでも釈放されることはあり得ます。