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立花孝志が請求放棄!請求の放棄とは?


「請求の放棄」という一般には知名度が低い手続が話題になっていました。
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2024年11月にあった兵庫知事選挙に関して、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志が、兵庫県議会議員の奥谷謙一が名誉毀損をしたとして、損害賠償請求訴訟を提起しました。2025年4月15日、東京地方裁判所で第1回口頭弁論(いわゆる民事裁判)が開かれました。ところが、4月15日付けで立花が請求放棄書を提出しました。これで「請求の放棄」により訴訟は終結しました。

「請求の放棄」とは?

請求の放棄とは、原告が自らの請求に理由がないことを認めることです。要するに、原告が「この裁判は私の負けです」と認めることです。

(請求の放棄又は認諾)
第二百六十六条 請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。
2 請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
(和解調書等の効力)
第二百六十七条 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

民事訴訟法

民事訴訟では、処分権主義という考え方がとられています。紛争について訴訟にするか否か、どの範囲で訴訟にするのか、訴訟提起後もそのまま訴訟を続けて判決を求めるかは、当事者に自己決定権が認められています。訴訟を提起するのは、立花孝志の自由です。それと同様に、訴訟を終わらせるのも立花孝志の自由です。原告である立花が請求の放棄をした以上、裁判所がこの件に介入することはできませんから、訴訟は終結します。
訴えの放棄には、「確定判決と同一の効力」があります。立花は今後同じ事件で再度訴訟をすることができません。

請求の放棄と訴えの取下げの違いは?

請求の放棄は、実務では、あまり利用されていません。
同じような手続に、訴えの取下げがあります。訴えの取下げは、原告が訴訟提起の撤回をすることです。訴えの取下は、実務では、よく使われています。
請求の放棄と訴えの取下は、その効果が違います。請求の放棄は、「確定判決と同一の効力」がありますから、原告が再度訴訟を提起することができなくなります。これに対して、訴えの取下げでは、原告が同じ訴訟を提起することが法的には可能です。
訴えの取下は、被告が応訴をしてからは被告の同意を得なければ効力が生じません(民事訴訟法261条2項)。いったん訴訟が始まってからは、被告には勝訴判決を得る権利があるからです。
報道によると、立花は、訴えを取下げようとしたのですが、被告である奥谷の同意を得られなかっため、請求の放棄をしたようです。

請求を放棄された被告は何ができるのか?

被告である奥谷からすると、訴訟により自らの正しさを明らかにしようとしたところで、肩透かしをくらいました。弁護士費用もかかっているでしょうし、このままではやられっぱなしです。奥谷は何かできないでしょうか。
考えれる方法は、立花の訴訟提起が違法であり、これによって精神的苦痛を被ったとして、立花を被告とする損害賠償請求訴訟を提起することです。この訴訟は、請求の放棄により終結した名誉毀損による損害賠償請求訴訟とは別の事件になります。もっとも、訴訟提起が違法であると裁判所に判断してもらうのは大変ですから、立花を被告とする訴訟を提起するのかは慎重に検討しなければなりません。