
保釈保証金が納付されていないのに警察が勾留中の被告人を誤って釈放した、というニュースが流れてきました。
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報道によると、「飯田警察署の留置施設で勾留されていた飯田市の男性について、警察官が簡易裁判所から届いた「保釈許可決定書」を、釈放を認める書類と誤って認識し、保釈金が納められていないにも関わらず、男性を釈放した」とのことです。
保釈許可決定後の流れは?
勾留の被告人について、弁護人は保釈請求をします。裁判官は、保釈が相当と判断をすれば、保釈許可を決定します。ですが、保釈許可決定だけでは釈放されません。保釈保証金が納付されない限り、被告人は釈放されません。
第九十四条 保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。
刑事訴訟法
② 裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。
③ 裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。
具体的には、保釈許可決定が出た後、弁護人が保釈保証金を現金で準備して、裁判所に行き、裁判所に保釈保証金を納付します。保釈保証金の納付を裁判所書記官が確認すると、裁判所書記官が検察庁に電話で連絡をします。裁判所からの連絡を受けて、担当検察官が留置先の警察署に対して釈放指揮書をファックスで送ります。釈放指揮書が届くと、留置先の警察署は被告人を釈放します。
このような手順を踏まえるので、保釈許可決定がなされてから実際に被告人が釈放されるまでにタイムラグがあります。例えば、保釈許可決定が4月16日にでても、弁護人が開庁時間中に裁判所に出頭できるのが翌日の4月17日になってしまうと、釈放されるのは4月17日になってしまいます。
現在では、保釈保証金の納付方法として、現金持参ではなく、Pay-easyによる電子納付も認められています。電子納付ですと、弁護人が裁判所まで移動する時間を節約できます。その一方で、電子納付の場合、電子納付の処理をしてから、担当の裁判所書記官が納付を確認するまでに時間がかかり、釈放がお遅れることもがあります。そもそも小規模な裁判所では、電子納付に対応していないこともあります。このため、現金を裁判所に持参するという古式ゆかしい方法がいまだに残っているのです。
ミスの原因は?
よくわからないのが、ミスの原因です。報道によると、警察官が保釈許可決定書を釈放を認める書類と誤ったとのことです。ですが、検察官の釈放指揮書がなければ釈放してはいけないというのはごくごく基本的なことですから、担当警察官が誤解したというのは信じがたいです。仮に担当警察官が誤解したとしても、被告人を釈放をするときに担当者がずっと一人で対応することはないでしょうし、検察官の釈放指揮書が届いてから実際に釈放するまでの間に警察内部の決裁が必要ですから、途中で他の警察官、特に決裁官が気付いたはずです。誰もミスに気付かずに釈放までに至ったというのは不可解です。
この事件では、警察がミスに気付いてから、被告人に連絡して警察に呼び、改めて被告人を拘束し、保釈保証金納付後に釈放したようです。被告人が素直に出頭に応じたからよかったのですが、被告人にとっては保釈保証金の没取のリスクを負うことなく逃げることが可能な状態でした。