法律のはなしをするよ

法律のはなしをゆるゆるとしています。

与沢翼が覚醒剤使用を告白!罪に問われるのか?

「秒速で一億円稼ぐ男」として知られる与沢翼が、X(旧Twitter)で覚醒剤を使用していたことを告白しました。
www.nikkansports.com
覚醒剤は日本では違法な薬物です。与沢翼は日本で罪に問われるのでしょうか。

覚醒剤所持の海外犯になる

覚醒剤の単純所持と自己使用は、覚醒剤取締法違反という犯罪になります。

第四十一条の二 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。
(略)
第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。
一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者
(略)

覚醒剤取締法

与沢翼は、タイに居住しています。覚醒剤を所持・使用したのもタイ国内です。タイでの行為を日本の法律で処罰できるのでしょうか。
日本の刑法は、原則として日本国内の犯罪に適用され、日本国外の犯罪は適用されません。ですが、例外として、一部の重大な犯罪は、日本国外の犯罪(国外犯)でも適用されます。

(国内犯)
第一条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
(すべての者の国外犯)
第二条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
(略)

刑法

覚醒剤取締法違反については、国外犯に関する規定があります。

第四十一条の十二 第四十一条、第四十一条の二、第四十一条の六、第四十一条の九及び前条の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。

覚醒剤取締法

覚醒剤の自己使用(覚醒剤取締法41条の3)は日本国外には適用されませんが、覚醒剤の単純所持(覚醒剤取締法41条の2)は日本国外にも適用されます。
このように与沢翼は、覚醒剤取締法違反(単純所持)に該当します。

自白だけでは有罪にならない

覚醒剤取締法違反に該当しているのであれば、与沢翼は罪に問われるのでしょうか。
おそらく実際に日本で罪に問われることはないと思います。日本の憲法と刑事訴訟法では、本人の自白だけでは有罪にされないというルール(補強法則)があるからです。

第三十八条 
(略)
③ 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

憲法

第三百十九条
(略)
② 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
③ 前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。

刑事訴訟法

このルールがないと、何もないとこから捜査機関が犯罪をデッチあげることが可能になってしまいます。
例えば、覚醒剤取締法違反で起訴され、被告人が法廷で起訴された事実を認めたとします。ですが、裁判所は法廷での自白だけでは有罪とすることができません。自白以外の証拠で、誰かが覚醒剤を所持していたことが補強されなければなりません。
例えば、
・被告人宅の捜索差押で覚醒剤様の粉末が発見された旨の捜索差押調書
・覚醒剤様の粉末が覚醒剤である旨の鑑定書
等の証拠が必要です。
自白以外の証拠がないのであれば、被告人本人が罪を認めていたも裁判所は無罪判決を言渡すしかありません。
与沢翼については、今から自白以外の証拠を捜査機関が集めることは不可能でしょう。ですから、与沢翼は覚醒剤を取締法違反には該当していますが、実際に罪に問われることはないと思われます。

終わりに

与沢翼はその言動から嫌っている方も多いですし、妻に対するDVのことを含めて、今回の告白は批判されても仕方がない内容だとは思います。ですが、批判を承知で覚醒剤を使用していたことを公に告白し、覚醒剤を二度を使用しないと誓った勇気には敬意を表したいです。