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声優高野麻里佳に「生命・身体に危害を加える」メール!何の罪?

声優の高野麻里佳の所属事務所が「高野麻里佳の生命・身体に危害を加えるという、極めて悪質な脅迫メールが送付される事案が発生いたしました」と報告しています。
www.oricon.co.jp
高野麻里佳は、『ウマ娘』のサイレンスズズカ役等で知られる人気声優です。
所属事務所は、予定しているイベントの延期や出演辞退等の対応をとる、とのことです。

「生命・身体に危害を加える」メールは威力妨害罪

メールを送信した人は、どのような罪に問われるのでしょうか。
報道では、具体的にどのようなメールが所属事務所に送信されたのかがわかりません。所属事務所によると「高野麻里佳の生命・身体に危害を加える」内容のようですので、推測してみます。
一般的には、被害者に対して「生命・身体に危害を加える」内容のメールを送信したのであれば、脅迫罪が成立します。

(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法

ですが、刑法222条2項により「親族」を対象とする害悪の告知をすれば脅迫罪になりますが、親族ではない第三者を対象とする害悪の告知をしても脅迫罪にはなりません。高野麻里佳の事件では、高野本人ではなく、所属事務所に対して「高野麻里佳の生命・身体に危害を加える」旨のメールを送信したということです。この場合に脅迫罪になるかは疑問です。
所属事務所に脅迫的なメールを送信することで、所属事務所の業務を妨害したのであれば、威力業務妨害罪になります。

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による

刑法

具体的なメールの内容がわからないと確たることは言えませんが、現に高野麻里佳のイベントの延期や出場辞退等の対応がとらえれていますので、おそらく威力業務妨害罪にはなるだろうと思います。

「生命・身体に危害を加える」メールは損害外賠償責任を負う

犯罪になるかとは別に、メールを送信した人は所属事務所に対して民法上の損害賠償責任を負います。
lettalkaboutlaw.net
現に高野麻里佳のイベントの延期や出場辞退等により所属事務所に対して経済的な損害が発生していますので、損害額は高額になると思われます。