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逮捕されたらどうすればよいのか?逮捕されたら弁護士を呼んで黙秘!


突然ですが、逮捕されたらどうすればよいのかご存知でしょうか。
自分は悪いことをするつもりがないので逮捕されることはないと思われるかもしれませんが、日常生活を送る中で思いがけず逮捕されてしまう可能性はゼロではありません。例えば、自動車を運転する方であれば、いくら安全運転を心がけていても、交通事故をおこしてしまう可能性はあります。人身事故を起こしてしまうと、過失運転致傷罪という犯罪になります。
また、犯罪をしていなくても、身に覚えがない事実で逮捕されることもあります。よく問題になるのがいわゆる痴漢冤罪です。例えば、先日このブログで三鷹バス事件を紹介しましたが、三鷹バス事件で犯人と疑われたAさんは、逮捕されています。
lettalkaboutlaw.net
このブログを読まれている方が明日逮捕される可能性はゼロではありません。逮捕されたときにどのように対応すればよいのか事前に知っておくことは無駄なことではありません。

逮捕されてからの流れは?

そもそも逮捕されたら、その後はどうなるのでしょうか。
警察が被疑者を逮捕すると、その日から被疑者は警察署の留置所で過ごすことになります。
警察は、逮捕してから48時間以内に事件を検察官に送致します。地域にもよりますが、通常は逮捕した翌日に警察から検察官に送致することが多いようです。ただし、逮捕したのがその日の遅い時間ですと、翌日に送致する準備が間に合わないので、逮捕の翌々日に送致することもあります。
検察官が捜査のために被疑者を長時間捕まえておく必要があると判断すると、裁判官に勾留の請求をします。裁判官が勾留を許可すると最大10日間は警察の留置所に捕まえておくことができます。この10日間に検察官は事件を捜査します。
10日間の勾留期間内に捜査が終わらないと、検察官は裁判官に勾留延長の請求をします。裁判官が勾留延長を許可すると、追加で最大10日間は警察の留置所に捕まえておくことができます。
勾留の再延長はできません(刑事訴訟法上は再延長もできなくはないのですが、対象になる犯罪が内乱罪等の場合に限られますので、現実的な話ではありません。)。
ですから、逮捕されると21日間は捜査のために捕まえられる可能性があります。

逮捕されるとどうなるの?

被疑者が逮捕・勾留されている間は、警察の留置所で過ごします。取調や実況見分等で捜査に被疑者が必要なときは留置所から出されますが、それ以外は留置所の部屋で自由に過ごすことができます。悪いことをした罰として捕まっている訳ではないので、作業をする必要はありません。
自由に過ごすといっても、留置所にはテレビやパソコンはありませんし、スマートフォンも使えません。時間を持て余してしまいます。書籍や雑誌の差入れをしてもらって、読書をしている人が多いようです。
勾留中は外部の人と面会をすることができます。ただし、弁護人以外の人との面会については、時間帯は平日日中に限られますし、警察署職員の立会がつきますし、時間もごく短いです。
留置所では通信機器は使えません。スマートフォンは使えませんし、外部の人と電話をすることもできません。手紙の受渡しはできますので、外部の人とやり取りをするときには、手紙を使います。ただし、切手代や便箋代は自己負担です。
外部の人と面会や手紙のやり取りをされると捜査に支障があると判断されると、弁護人以外とは面会や手紙のやり取りができません。この場合は弁護人を通じて外部の人と連絡をとることになります。

逮捕されたら弁護士を呼ぶ

逮捕されたら最初にやることは、弁護士を呼ぶことです。警察を通して弁護士に連絡し、面会に来てもらってください。
知り合いに弁護士がいるときには、その弁護士を呼んでも構いません。弁護士の連絡先は警察が調べてくれますが、誰を呼べばよいのかを警察がわかる程度の情報は記憶しておいてください。例えば、「東京の佐藤弁護士を呼んでください」と言われても、「東京の佐藤弁護士」は約280名いますので、どの佐藤弁護士かが特定できません。弁護士のフルネームや所属事務所等を記憶しておいてください。弁護士の名刺を財布に入れておいてもよいと思います。ただし、弁護士の中には刑事事件をまったくやらない弁護士もいます。逮捕されたときに呼んでもよいのかは事前に知り合いの弁護士に確認しておいたほうがよいでしょう。
弁護士の知り合いがいないときは、当番弁護士を呼んでください。警察に「当番弁護士を呼んでください」と言えば通じます。
www.toben.or.jp
当番弁護士は、各地の弁護士会が運営している制度です。逮捕されている被疑者等から当番弁護士の依頼があったときには、その日の担当弁護士が派遣され、面会をして被疑者に対して助言をします。各地の弁護士が運営しており、当番弁護士の日当や交通費は弁護士会が負担することになっています。要するに、無料で弁護士を呼ぶことができます。

逮捕されたら取調では黙秘

逮捕後の取調では黙秘が原則です。弁護士と面会をするまでは黙秘をしてください。特に、いわゆる痴漢冤罪のように身に覚えのない事件で逮捕されたときは、絶対に黙秘してください。取調室に入ってから出るまでの間は事件に関係することは一言も発してはいけません。
黙秘をしたほうがよいのは、取調で供述をしてしまうと、その供述が後の裁判で不利な証拠になる可能性があるからです。
黙秘をするのではなく、供述をした方がよいのではないかと思われるかもしれませんが、それは弁護士と相談してからにしてください。たしかに、実務上は、取調で黙秘をするのではなく、供述をしたほうが被疑者にとっては有利になることもあります。ですが、それは事件の内容によります。刑事事件に詳しくない方が逮捕された直後の精神状態で、供述をしたほうがよいのか、黙秘をしたほうがよいのかを一人で判断することは無理です。
ですから、まずは黙秘をしてください。その上で、そのまま最後まで黙秘を続けるのか、供述をするのか、供述をするにしてもどの範囲で供述をするのかは弁護士に相談してください。

逮捕されたときに日ごろからやっておいたほうがよいこと

逮捕されたときに備えてというわけではありませんが、日ごろからやっておくと逮捕されたときに役立つことがあります。

電話番号を紙に書いておく

家族や勤務先の電話番号は紙に書いておいたほうがよいです。
逮捕されるとしばらくの間は外に出られない可能性がありますので、弁護人から家族や勤務先に対して逮捕されたことを伝えてもらう必要があります。そのときに電話番号がわからないと弁護人が連絡のしようがありません。
スマートフォンに電話番号が登録されている場合、スマートフォンが捜査の証拠になっていないのであれば、弁護士がスマートフォンを受取って、電話番号を確認することができます。ですが、スマートフォンが捜査の証拠になっていると、弁護士はスマートフォンを受取ることがすぐにはできません。いわゆる痴漢冤罪ですと、スマートフォンで盗撮をしている可能性があるので、スマートフォンが捜査の証拠になっていることがあります。
家族や勤務先の電話番号を紙に書いておけば、弁護士との面会のときにその紙を見せれば弁護士はどこに電話をすればよいのかがわかります。
私は、メモ用紙に家族と勤務先の電話番号を書いておき、そのメモ用紙を財布にしのばせています。逮捕されたときだけではなく、外出先でスマートフォンをなくしてしまい、公衆電話から家族に電話をするときにも役立ちます。

現金を持ち歩く

現金は持ち歩いたほうがよいです。
留置所内では食べ物や日用品は支給されますが、最低限のものしか支給されません。日用品が不足するときは、自費で購入する必要があります。
外部の人と連絡をするときには、切手や便箋を準備する必要がありますが、これも外部の人から差入れをしてもらうか、そうでなければ留置所内で自費で購入しなければなりません。
この自費購入では、現金しか使えません。最近ではキャッシュレス決済が普及したため、ほとんど現金を持ち歩かない方もいますが、現金がないと留置所内では何も購入できません。
普段はキャッシュレス決済の人でも、現金しか使えない場合に備えて現金は持ち歩いたほうがよいでしょう。1万円札が1枚あるだけでもだいぶ違います。