法律のはなしをするよ

法律のはなしをゆるゆるとしています。

ストリップ劇場東洋ショーが営業停止!ストリップ劇場は何の罪?


大阪市のストリップ劇場「東洋ショー劇場」が、2025年5月7日付けで公安委員会から営業停止8か月の行政処分を受けたと旧Twitterで告知しています。


東洋ショー劇場は、2024年11月20日に警察に摘発され、経営者等が公然わいせつ罪で現行犯逮捕されたと報道されていました。
www.news-postseven.com
経営者等の刑事処分がどうなったのかは報道されていないようです。今回の行政処分は、同じ事件に関して経営者等に対する刑事処分とは別に、東洋ショー劇場の経営主体が行政処分を受けたものです。

ストリップとは?

ストリップは、主に女性が音楽に合わせて踊りながら衣服を脱ぎ、裸を見せる演芸です。
ストリップ劇場は、法律上は、風営法2条6項3号所定の店舗型性風俗店(いわゆる3号営業)の一種です。

(用語の意義)
第二条
(略)
6 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
(略)
三 専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場(略)として政令で定めるものを経営する営業

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

(法第二条第六項第三号の政令で定める興行場)
第二条 法第二条第六項第三号の政令で定める興行場は、次の各号に掲げる興行場(略)で、専らこれらの各号に規定する興行の用に供するものとする。
(略)
三 ストリップ劇場その他客席及び舞台を設け、当該舞台において、客に、その性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態又はその姿態及びその映像を見せる興行の用に供する興行場

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令

ストリップ劇場は、風営法により厳しい規制を受けますが、それ自体は合法的な施設です。

ストリップ劇場は公然わいせつ罪になる?

ストリップ劇場が合法的な施設ならば、東洋ショーはなぜ摘発されたのでしょうか。
東洋ショーの関係者は、公然わいせつ罪で現行犯逮捕されています。ストリップ劇場の演目は、時代や劇場によって様々ではありますが、演目の終盤には女性ダンサーが全裸になり、陰部を観客に見せることは概ね共通しています。これが刑法上の公然わいせつ罪にあたるとされたのです。

(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

刑法

過去には、ストリップが公然わいせつ罪になるのかが刑事裁判で争われたこともありました。
最高裁判所は、

  • 公然わいせつ罪における「公然」とは不特定または多数の人が認識することができる状態をいう(最高裁第二小法廷昭和32年5月22日決定)
  • 不特定多数の人を勧誘した結果集まった数十名の客の面前で行為をしたのであれば、夜間一定の部屋を密閉してなされたとしても公然猥褻罪が成立する(最高裁第三小法昭和31年3月6日決定)

等の理由で、ストリップ劇場は公然わいせつ罪になると判断しています。
判例からするとストリップ劇場は公然わいせつ罪になると思われます。ところが、ストリップ劇場は、女性ダンサーは全裸にはなっておらず、陰部を観客に見せてはいない、という建前で営業していました。監督官庁の公安委員会(実質的には警察署)がこれを黙認し、摘発していませんでした。そのため、公然わいせつ罪になると思われるにもかかわらず、ストリップ劇場は営業を継続してきたのです。
2024年11月の摘発は、今までは摘発すべきものを摘発していなかったのを改めて、あるべき姿にしたともいえます。

本当にストリップは公然わいせつ罪なのか?

摘発後の東洋ショーは、女性ダンサーが全裸になるのではなく、「はいていないように見えるパンツ」をはくことで営業を続けていたようです。
www.news-postseven.com
ですが、東洋ショーの摘発後も、東洋ショー以外のストリップ劇場は、依然として女性ダンサーが全裸になる演目で営業を続けており、警察署もそれを黙認していると思われます。なぜ東洋ショーだけが摘発されなければならなかったのでしょうか。大阪万博前の「浄化作戦」ではないかとも言われており、恣意的な摘発ではないかとの疑問は残ります。
そもそもストリップ劇場は本当に公然わいせつ罪になるのでしょうか。
最高裁判所の判例によると、ストリップ劇場は公然わいせつ罪になると思われます。ですが、これらの判例は昭和30年代の判例です。比較的新しい判例は1976(昭和56年)年のものですが、これも約50年前の判決ですし、女性ダンサーが舞台上で男性客の下半身を裸にして陰茎を手淫した事案です(最高裁第二小法廷昭和56年7月17日判決)ので、ストリップ劇場全般にはあてはまりません。
ここ数十年の間にストリップ劇場が公然わいせつ罪になるかを真っ正面から取り扱った裁判例はないようです。昭和30年代と現在とでは性に関する意識は大きく変わっています。
公然わいせつ罪は、社会法益に対する罪であり、その保護法益(法によって守られる利益)は、性道徳、性秩序の維持等と理解されています。ストリップ劇場は、ストリップを見たい客が集まる場所です。そこでストリップをすることで性道徳、性秩序が害されるといえるのでしょうか。営業の方法によっては、性道徳、性秩序を害したり、個人の性的羞恥心を害したり、青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすことがあるかもしれませんが、それは風営法や青少年保護育成条例等の他の法令で規制すればよいのではないでしょうか。
東洋ショー劇場は、行政処分に対して不服申立をすることなく、営業停止を受入れるようです。裁判で争ったときの時間、費用、労力、今後の警察署との関係等を考えると致し方ありませんが、本当にこれでよかったのかは疑問が残りました。