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無実の罪で326日間拘束!釈放されなかった理由は?刑事補償は?


無実の男性が326日間拘束されていたとされています。
www.yomiuri.co.jp
報道によると、次のような事案です。
2023年11月名古屋市内で古物証のVさんの遺体が見つかりました。Aさん(女性)は、Vさんを殺害して現金や貴金属等7500万円相当を奪ったとして強盗殺人、死体遺棄で起訴されました。AさんはVさんを殺害したこと等は認めていました。Aさんは、Bさん(男性)に「遺体を隠すのを手伝ってもらった」と供述しました。Bさんは死体遺棄罪で逮捕勾留され、起訴されました。裁判では、Aさんの供述が客観的状況と矛盾している等の理由で信用できないと評価され、Bさんは無罪になりました。Bさんは逮捕されてから保釈が許可されるまでの間、326日間拘束されていました。

共犯者のいる否認事件では保釈許可は難しい

Bさんはホストクラブの従業員で、Aさんとはホストクラブのホストと客という関係でした。AさんがVさんを強盗殺人をした動機は報道されていませんが、おそらくホストクラブでしょう。AさんとBさんの関係からすると、Aさんの強盗殺人、死体遺棄にBさんが関与していたのではないかと疑われても仕方がないとは思います。
問題なのは、Bさんが捜査の対象になったことではなく、その後長期間身体拘束されたことです。
現在の日本の刑事裁判では、Bさんのように、

  • 犯行を否認している
  • 共犯者がいる

事件ですと、なかなか保釈が許可されないというのが実情です。BさんがAさんに接触をして裁判で真実を供述しないように働きかけをすると見られるからです。Bさんの保釈が許可されるまでに長期間かかったことは、現在の日本の刑事裁判では普通なことです。
ですが、本当にこれでよいのでしょうか。
報道されていませんが、Aさんは強盗殺人罪で起訴されていますから、勾留されていたはずです。Bさんが保釈されると、(Aさんに接見等禁止決定がでていなければ)勾留中のAさんと面会をしたり、手紙のやり取りをすることはできます。
とはいえ、Aさんとの面会は、施設職員が立会い、その内容を記録されます。Aさん宛の手紙も、施設側が開封し、その内容を確認します。この状況でBさんがAさんに接触をして働きかけをすることは現実的ではありません。
保釈中にBさんがAさんに接触をしようとすると、保釈保証金は没取されます。また、働きかけの方法によっては証人威迫罪(刑法105条の2)等の他の犯罪になります。Bさんの起訴罪名は死体遺棄罪で、強盗殺人のような重罪ではありません。それなのにBさんは保釈保証金没取や新たに刑事責任を負う危険を負ってまで、Aさんに対して働きかけをするのでしょうか。
本来であればもっと早い時点で保釈が許可されてもよかったと思います。

無罪になれば身体拘束による刑事補償がある

Bさんは刑事補償法に基づき刑事補償を受けられます。金額は1日あたり1000円~1万2500円です。

(補償の内容)
第四条 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁錮こ若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。

刑事補償法

Bさんは逮捕されてから保釈許可で釈放されるまでの期間が326日間ですから、最大で407万5000円です。この金額が割に合っているかとなると、「少なすぎる」と思われる方の方が多いのではないでしょうか。
刑事補償法は身体拘束による補償しか対象にしていませんので、身体拘束をされていない期間の損害は補償の対象になりません。具体的には、

  • 逮捕前の任意取調で仕事ができなかった
  • 保釈許可で釈放された後も死体遺棄事件の被告人という立場のため仕事に就けなかった

という事情があったとしても、刑事補償法では補償されません。