
2025年7月の参議院選挙を控えて、各党の参議院選挙の候補者等が話題になっています。
日本の国会は「衆議院」と「参議院」の二つの議院から構成されています。多くの人にとって、衆議院の方が目立って見えるかもしれません。中には、参議院選挙は政権選択選挙ではないからという理由で冷ややかな目を向けている方もいるかもしれません。
ですが、実は、参議院も強力な権限を持つ重要な機関であり、参議院選挙の結果は今後の政権の行方を大きく左右します
そもそも参議院とは?
日本の国会は「二院制(二つの議院)」を採用しています。これは、慎重に審議するために、一つの議案を二つの議院で議論する仕組みです。
参議院は、衆議院とともに国会を構成する機関です。
| 任期 | 解散 | 定数 | 選挙権 | 被選挙権 | |
| 衆議院 | 4年 | あり | 465議席 | 18歳以上 | 25歳以上 |
| 参議院 | 6年(3年ごとに半数改選) | なし | 248議席 | 18歳以上 | 30歳以上 |
GHQ草案では一院制だった
大日本帝国憲法では、衆議院と貴族院の二院制を採用していました。
第二次世界大戦後、GHQが日本国憲法の草案を起案します。新憲法では身分制度が廃止されることや日本では連邦制を採用していないことから、草案では一院制が予定されていました。その後、当時の日本側からの要請により、日本国憲法は二院制を採用することになりました。
衆議院の優越とは?
国会では基本的に、両院が同等の権限を持っています。しかし、一部の場面では「衆議院の優越」が認められています。
例えば、
- 内閣総理大臣の指名(憲法67条2項)
- 法律案の議決(憲法59条2項)
- 予算案の議決(憲法60条2項)
- 条約の承認(憲法61条)
等です。
衆議院の権限の方が強いという印象を持たれるのは、この「衆議院の優越」があるためです。
しかし、「衆議院の優越」が認められるのは、あくまで一部の場面だけです。
実は参議院の権限は協力
憲法改正の発議は参議院は衆議院と対等
「衆議院の優越」が認められない場面では、参議院は衆議院と対等です。
例えば、憲法改正の発議は、両議院で3分の2以上の賛成で可決される必要があり、参議院と衆議院は完全に対等です(憲法96条)。政権与党が衆議院で圧倒的多数の議席を占めていても、参議院で可決されない限りは憲法改正の発議ができません。
法律案の議決は参議院は衆議院とほぼ対等
法律案の議決では、「衆議院の優越」が認められています。ですが、衆議院で可決した法律案が参議院で否決された場合は、衆議院で3分の2以上の特別多数で可決されなければ可決されません(憲法59条2項)。現在の選挙制度を前提にすると、単独の政党が衆議院で3分の2以上の議席を得ることは困難です。法律案の議決に関しては衆議院と参議院はほぼ対等といってもよいのです。
参議院には解散がない
内閣は衆議院を任期途中で解散することができます。これに対して、参議院には解散がありません。これは非常に強力な権限です。
例えば、内閣が法律案を提出し、政権与党から造反者がでて、衆議院で否決されたとしてます。この場合、内閣は衆議院を解散し、衆議院選挙を実施して、内閣=政権与党が正しいのか、造反者&野党が正しいのかを有権者に判断してもらうことができます。内閣=政権与党が正しいのであれば、解散後の総選挙では政権与党が多数派になり、法律案を可決することができるようになるはずです。
これに対して、内閣の提出した法案を参議院が否決した場合、内閣は参議院を解散することができません。衆議院で3分の2以上の特別多数で可決する目処がないのであれば、法律案を可決させる方法は内閣にはないのです。
「ねじれ国会」が政権交代に繋がる

衆議院では与党多数が多数派、参議院では野党が多数派となる状態を「ねじれ国会」と呼びます。過去の「ねじれ国会」のときには、内閣が政権運営に支障をきたしていました。
2007年参議院選挙後
その例が2007年参議院選挙後の「ねじれ国会」です。
2007年の参議院選挙では、政権与党の自民党が惨敗し、公明党との連立与党でも参議院の過半数の議席をとれませんでした。当時は自民党と公明党の連立与党で衆議院の議席の3分の2を確保しており、重要な法律案は「衆議院の優越」で再議決することも可能でしたが、それでも政府は国会対応に苦労していました。
その結果、2009年の衆議院選挙で参議院第一党の民主党を中心とした連列政権への政権交代が実現しました。
2010年参議院選挙後
ところが、2010年参議院選挙では、今後は民主党が惨敗します。自民党が参議院第一党になり、「ねじれ国会」になりました。
当時は民主党を中心とした連立与党が衆議院で3分の2の議席を確保しておらず、「衆議院の優越」による再議決もできない状態でした。当時の民主党政権は「決められない政治」と批判されていましたが、この状況ではどれだけリーダーシップがある人が内閣総理大臣でも「決められない政治」にならざるを得ないでしょう。
結局、2012年の衆議院選挙で民主党は惨敗し、自民党と公明党の連立政権に政権交代し、民主党政権は短命に終わりました。
参議院選挙も重要
参議院は強力な権限を持っています。過去の参議院選挙の結果は、政権の行方を左右してきました。
参議院選挙は、重要な選挙なのです。